福田和代さんの作品を初めて読みました。2011年に発行された単行本。「小説推理」に連載されたものに少し修正を加えた作品だそうです。
主人公の横田大志は銀行の業務システムを保守管理するシステムエンジニアでプロジェクトマネージャーです。彼が属する銀行が他行と合併するのを受けて、夫々で運用していたシステムも段階的に統合されることになる。
その第一段階となるシステムが出来上がり、実機で運用し始めると横田らが担当するセクションで立て続けにトラブルが発生して彼らは寝るまもなく奮闘する。
始まりは落雷・停電によるシステムダウン。本来なら起動するはずのUPSが眠ったままだった。更に、振込み依頼が無いのにコンピュータが勝手に振込みを実行してしまう新たな問題発覚。
それらが解決したと思ったら今度は両行間で取引データの送受信が出来なくなる。これはUNIXの2038年問題が原因でした。
開発期間を短くするために、新規ではなくて既存のものを流用し、大勢の人間をかき集めて作ったこともあって、残った数人の保守メンバーではシステムの細かいところまで把握できていない。
なのでトラブルの原因を探し当てるのに時間がかかります。その間にも、ATMの前で客が怒鳴り、対応する行員が苦慮しているだろうと思うと横田は胃が痛くなってくる。
みずほ銀行が誕生した際にいろいろなトラブルがあって、類する仕事したことがある経験上、中側はたいへんなことになっているだろうな、と当時想像していました。この本、元システムエンジニアの著者がリアルに描いたというから、その中側もこのような感じだったのでしょうか。
ただ、物語はハッピーエンドなので読後もスッキリです。
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