初めて読んだ神林長平さんの作品、「ぼくらは都市を愛していた」。
主人公は公安警察官の綾田カイムと、日本情報軍機動観測隊中尉の綾田ミウ。この2人は双子ですが何故か互いに様子が異なる別の世界に居る。
それぞれの世界でのストーリーが平行して進んでいくのですが、この二つはどのような接点を持つのだろうと思いながら読み進んでいくと、終盤になってようやく繋がった。
話の舞台は近未来、2020年代です。そこではデジタルデータを狂わす「情報震」と呼ぶ現象が頻発していました。地震は地面がゆれるのに対して、情報震は0と1が並んだデジタルデータがゆれる。そろばんの玉が動いてしまって数値が狂ってしまうような状態だそうですが、その原因は解明できていない。
情報震には余震も有って、それが先の綾田姉弟が居る世界を作り出してしまったとしています。
何でもがデジタル化されていっている今の時代、このような事が起これば人間の生活全体にダメージを与えることは想像できます。この話の中では通信障害、人間同士のコミュニケーションがとれなくなったことが大きく影響して世界が崩壊します。
コミュニケーションツールとして興味深いのが、情報軍が使っていた体内埋込型汎用通信機「ボビィ」。本体は両の耳たぶに埋め込まれていて、耳たぶを指で押さえることで操作する。送話は発声せずにしゃべる真似をするだけで可能。受信音声は骨伝導ホンから伝わる。携帯電話の究極の進化形です。
あと、公安警察が体間通信というのを使っています。これは後天性偽テレパシー能力で、他人の腹の内を読んだり自分のを読まれたりする。ここまでのコミュニケーション能力を人間は持たないほうが良いように思う。
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