初めて読んだ馳星周さんの作品です。文藝春秋から2011年8月に発刊された物です。
主人公は福井県の敦賀原発で警備員として働く相原徹。彼の中学時代から今の職に就くまでが、五つの短編「事故」・「チェルノブイリ」・「ふっかつのじゅもん」・「花かえ」・「光あれ」で書かれています。この間常に原発が彼の生活に付きまとい、暗い影を落とす。
チェルノブイリ事故が起こった時の場面での会話。
「原電は絶対安全や言うてたのに」
「ソ連やからや」「共産主義や言うてみんな怠け者になっとるんや。だから事故が起こる。そやけど、日本は大丈夫や」
「どうして断言できるの。アメリカでも事故があったやないの。アメリカは資本主義やで」
「アメリカ人も怠け者や。でも、日本人はちゃう」
この小説では、3.11福島原発事故発生までは書かれていませんが、3.11まで多くの日本人はこのように日本は大丈夫やと思っていたのでは。
でもあれを境にそれは変わった。事故を起こさない原発は無いと認識した。私もそうですが、日本の電力会社の原発運用技術はレベルが実は低いのではと疑う人も増えたのではないか。
今や日本中に原発があるわけで、一度原発が事故を起こせば、日本のどこに住んでいても、その影響を受ける可能性があるのです。それでも原発を使うなら覚悟を決めるしかない。
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