生島治郎さんの「上海無宿」を読みました。中央公論社、1995年初版発行の単行本です。定価は1450円。
舞台は上海事変後の、1938年の上海。そこで主人公の私立探偵・林愁介が活躍する物語です。戦火に巻き込まれた上海の街も、半年ほどで活気を取り戻していった事に主人公も驚く。
彼のアジト近くにある豚饅頭屋などは、戦火が止むとすぐに商売を始めたとか。この豚饅頭はちょうど一口で頬張れるくらいのサイズで、中には豚肉とネギしか入っていないがばかに旨いらしい。
この饅頭の他に、小説の中には上海グルメの代表格の一つともいえる蟹を食する場面も出てきます。蟹のシーズンや雄雌の違いや料理の仕方などを、多くのページを使って解説しています。蟹に合う飲み物は老酒らしいです。
私は蟹は食べるのが面倒と思う人ですが、どのような味なのか、読んでいて興味がわいてきました。ハードボイルド小説のはずが、何故かこの二つの上海グルメが印象に残りました。
この作品は、読み切り短編となっていて、最後に主人公がどうにかなったといった結末のようなものは無いです。続編があれば読んでみたいです。
スポンサード リンク