志茂田景樹 作品

直木賞受賞作家でもある志茂田景樹さん。読んだ下記の2冊は架空度合いが半端ではないです。

零戦大逆襲!

零戦大逆襲!

昭和二十年五月十九日、ついに零戦88型特一航空集団に出撃命令が下った。すでに硫黄島は玉砕し、目指すは大攻防が続く沖縄本島。零戦88型それは、大戦初期に無敵を誇った零戦52型をさらにパワーアップしたもので、搭乗員も歴戦の勇士たちで構成されていた。戦艦大和の凄絶な攻撃、人間爆弾「桜花」の特攻にも動じなかった米軍に、零戦が大逆襲をかけた!・・・・・

(祥伝社 刊)

感想

劣勢のなか決戦戦闘機として、全ての面でパワーアップした零戦88型を投入。そのパイロットとして各部隊から優秀な人材を召集。そのパイロットの1人は女性、飛行小隊長、九条由紀子(主人公)。もちろん凄腕の戦闘機パイロット。ベアキャットやB29など敵機を次々と撃墜していく。この無敵の航空集団(約150機)の活躍で沖縄戦に勝利。

陸海空で戦闘が展開されるが、文章表現に迫力が無い。空中戦でも敵機を簡単に撃墜、したように感じる。敗戦濃厚だったのに、零戦88型の投入で、味方にたいした被害も無くアッというまに大逆転、という読後の感じ。この作品は全3作で後「風神編」「雷神編」と続く。「風神編」が手元に無いのが残念。

零戦88型について

昭和18年、海軍航空本部がベアキャットとB29に備えて従来の性能を飛躍的に向上させた大改良型の大型零戦の開発を三菱飛行機会社に要求。昭和20年に完成させた機体は海軍の要求を全ての面で凌駕し、あらゆる機種の敵と戦い撃墜できる性能を備えていた。

製造の殆どは山梨県の山腹につくった地下工場で行われ、月産300から500機としていた。

(以下小説文より)
従来の零戦に比べて重量は1.5倍になっているが、馬力が2倍近くになっているので性能はかなりアップしている。特にスピードとなって現れた。機体はやや太く見えるが、空気抵抗を減らすように全てに細心の工夫がされている。たとえば、操縦室が従来の零戦に比べて低くつくられている。

防弾能力はこれまでの零戦とは比較にならないくらい良かった。一万メートルの高高度でも全力で空戦ができる。

最大速度770km/h/航続距離3850km/エンジンは栄101型2100馬力/適正空戦高度10000m/25ミリ機関砲2挺(1挺120発)、12.7ミリ機銃2挺(1挺600発)

零戦大逆襲! 雷神編

零戦大逆襲! 雷神編

サイパン上空で恋人を撃墜された九条由紀子に、涙にくれる暇はなかった。帝国の菊水艦隊が総力を上げてトラック島を襲撃している最中、極秘命令が下ったのだ。急遽、本土へ戻った由紀子ほか五十名の選りすぐりの零戦搭乗員が厚木基地で見たものは、米本土制圧に不可欠の”帝国の決戦兵器”レシプロ機究極のパワーを持つ最新鋭零戦100型だった!・・・・・

(祥伝社 刊)

感想

全3作の2作目(風神編)が手元に無いので1作目に続いて3作目(雷神編)。零戦88型の活躍でトラック島を奪取。そこで早くも新型零戦100型を投入。ハワイを再攻撃し占領。その後、敵本土攻撃に向かったが本土攻撃直前に敵が降伏。

ハワイ攻防で敵国は9000m上空から300機のB29で連合艦隊を爆撃。一万発の爆弾を連合艦隊は回避行動をしながらかわした。被害は駆逐艦一隻のみ。物量の多い敵国とはいえ非現実的。零戦100型は敵国最後のレシプロ攻撃機スカイレーダーや最初のジェット戦闘機シューティングスターと対決。文章表現が乏しいせいか空中戦のシーンに迫力無し。

新型零戦と凄腕パイロットの活躍で敗戦濃厚の戦争を大逆転。大きな苦戦も無く、すいすいと勝ち進んだ感じ。もしかしたらこの作品の核となるのは2作目なのか。2作目では主人公の女性パイロット九条由紀子の恋人が撃墜されている。

零戦100型について

零戦100型は、零戦88型の登場から約5ヵ月後、究極のレシプロ戦闘機として戦線に投入された。ジェット戦闘機も開発が進められていたが未だ試験飛行も成功していなかった。スカイレーダーとの究極のレシプロ機対決は互角。開発初期のジェット機シューティングスターは敵ではなかった。

(以下小説文より)
風速30メートルぐらいまでなら絶対に安全に飛行できる全天候型戦闘機。運動性能は軽快ながら、安定感が零戦88型以上に感じられ、振動が少ない。高度一万メートルという高空でも720キロのスピードが出せる。強力な馬力にものを言わせて900キロ爆弾を装備できる。無線電話は零戦88型より改善されて、いちいち送、受の状態にしなくてもそのまま送受信が出来るようになっている。

最大速度810km/h/航続距離4500km/エンジンは栄201型2400馬力/上昇限度15000m/25ミリ機関砲二挺12.7ミリ機銃二挺